三年生の夢?(eのxのx乗乗の積分)

e^{x^x}不定積分を導出してみました。
x^x不定積分を導出した時↓と同様のやり方です。
wolfram.hatenablog.jp

結果がこちら。

\displaystyle \int e^{x^x}\,dx=-e\sum_{n=1}^\infty\sum_{k=0}^{n-1}\frac{x^n(\ln x)^k}{k!(-n)^{n-k}}B_{n-1}+C

ただし B_n はベル数。

ベル数についてはWikipediaには以下のように書いてあります。

n個のものを分割(もしくはグループ化)する方法の総数にあたる数である。n番目のベル数を B_n とし、B_0=B_1=1 と定義する。Eric Temple Bell にちなんで名付けられた。

B_n=\displaystyle\frac{1}{e}\sum_{k=0}^\infty \frac{k^n}{k!}


ベル数は 1, 1, 2, 5, 15, 52, 203, 877, 4140, 21147, 115975,\cdots と続くそうです。
詳しくはWikipediaを参照ください。

さて、次は x^x不定積分を導出した時と同様に、微分して元の関数となるかどうか確かめるわけですが、ここでは省略します。気になる方は自分で確認してみて下さい。

積分を求めてみる

とりあえず冒頭の式を正しいものとして、\displaystyle \int_0^1 e^{x^x}\,dx を求めてみましょう。

冒頭の式をよく見ると、以前求めた x^x不定積分と似ていることが分かります。↓

\displaystyle \int x^x\,dx=-\sum_{n=1}^\infty\sum_{k=0}^{n-1}\frac{x^n(\ln x)^k}{k!(-n)^{n-k}}+C

全体を e 倍して各項に B_{n-1} を付けただけですね。

ここで「二年生の夢」という有名等式を思い起こします。

\displaystyle\int_0^1 x^x\,dx=-\sum_{n=1}^\infty(-n)^{-n}

これについてもWikipediaが詳しいです。

とにかくこの式に対して、上と同様に全体を e 倍して各項に B_{n-1} を付けてみましょう。
すると以下の式が導けます。

\displaystyle \int_0^1 e^{x^x}\,dx=-e\sum_{n=1}^\infty(-n)^{-n}B_{n-1}

ただし B_n はベル数。

これが正しいことを確かめてみます。
Desmosで数値計算すると、以下のようになりました。

Desmosで無限は扱えないので、zには適当に大きな数字を代入しています。
また、仕様で小数第12位以下は省略されています。


確かに成り立っています。

積分を求めてみる その2

実は、同じことが \displaystyle \int_0^1 e^{x^{-x}}\,dx についても成り立っています。

「二年生の夢」と呼ばれる等式はもう1つあり、それが以下です。

\displaystyle\int_0^1 x^{-x}\,dx=\sum_{n=1}^\infty n^{-n}


この式に対して、全体を e 倍して各項に B_{n-1} を付けてみると、以下の式が導けます。


\displaystyle \int_0^1 e^{x^{-x}}\,dx=e\sum_{n=1}^\infty n^{-n}B_{n-1}

ただし B_n はベル数。

Desmosで確かめると、確かに成り立っていることが分かります。

それにしても、なぜ被積分関数e の上に乗っけて積分するとベル数が付いてくるのでしょうか。不思議ですね。

まとめ


\displaystyle \int e^{x^x}\,dx=-e\sum_{n=1}^\infty\sum_{k=0}^{n-1}\frac{x^n(\ln x)^k}{k!(-n)^{n-k}}B_{n-1}+C

ただし B_n はベル数。



\displaystyle \int_0^1 e^{x^x}\,dx=-e\sum_{n=1}^\infty(-n)^{-n}B_{n-1}

ただし B_n はベル数。



\displaystyle \int_0^1 e^{x^{-x}}\,dx=e\sum_{n=1}^\infty n^{-n}B_{n-1}

ただし B_n はベル数。


二年生の夢になぞらえて、これらの定積分を三年生の夢と呼んでみてもいいかも?
ただ、これらの式は初学者のやりがちな単純な推論という意味での「夢」とは異なりますね。